ゆがみ

 

はじめに

OMCの新制度「Contribution」の公表にあたって中高生に向けて話をする予定でしたが、撤回にあたって少し違う話をします。

 

まずはmapleの声明

続・OMCとどう向き合うべきか - mapleの自由帳

を読んでください。これを読んだという前提で話をします。

制度自体の問題点はおおむねmapleが指摘した通りなので、もう少し一般的なことについて話すことにします。

 

お金の問題

mapleが指摘していますが、改めて問うことにします。

 

writerやtesterの作業について、「本来はお金がもらえる作業であるが、黎明期だから仕方ない」という感覚はありますか?中高生はバイト経験が浅いこともあり、持ち合わせていない人が多いと思います。

わかったうえで活動をしているなら良いのです。わかっているのなら良いのですが……

それが自分の役に立つ作業かそうでないか、などといったことは関係ありません。むしろ「自分のためになっており、それがお金の代わりに十分になっているから、何も問題ではない」と思っているなら、いつでもやりがい搾取の被害者になります。さらに、作業に「責任」を持つことになるなら、それに対しても本来はお金が発生します。

 

上記の感覚をボランティアが失うと、運営ですら無意識のうちに搾取が始まります。この点、ただ働きをしていることと、それが当然視されていることには大きなギャップがあります。皆さんが今後もwriterにせよtesterにせよこのプロジェクトに関わっていく中で、運営にとってもユーザーにとっても後者のようには絶対になってほしくないのです。

 

今後に向けて

今回の件に対する批判として、こういった角度からのものは(少なくとも私の見える範囲には)見受けられなかった時点で、もう当たり前になっていたのかもしれません。  
繰り返しになりますが、ただ働きをしていることと、それが当然のこととみなされていることには大きなギャップがあります。このプロジェクトがボランティア無しには成り立っておらず、そのボランティアの多くが中高生である以上、尚更これは大事なことです。労働に関する法律に疎い中高生への配慮を完全に運営に押し付けるのも厳しい話です。運営が無意識のうちに道を外さないようにするためにも、中高生も自分のこととして認識してほしいと思います。

Contributionが廃止されたとはいえ、tester制度自体に潜む問題点は議論の余地が残されていると思います。改善は難しいにせよ、問題点が明確に言語化されておりそれをお互いに共有した状態にはできるはずです。多くのユーザーの協力のもとに成り立っているプロジェクトである以上、改善に向けた筋道を探すうえでも必要なことではないでしょうか。

「ビジネスとはそういうものだ」という言葉は、”顧客側には”関係ありません。エスカレートする前に躊躇わずに意見をする方が、ユーザーの声が運営に届くことで健全な環境に近づくと思いますが、どうでしょうか。

私はもう脱退してしまったので、以降私が暴走に気づくとすればもう引き返せないところまで行った後だと思います。そうならないよう、皆さんが皆さん自身でよりよい環境を求め続けるような場となることを願っています。

競争の構造

mapleの声明の一節

正直なところ、競技数学というのは、それが「競技」の形をとってしまっているがゆえに抱える問題が少なからずありますが、(以下略)

について考えることにします。私の主観が多く含まれますがご容赦ください。

 

まずは皆さんがどういった理由で(writer、tester、solverの)活動をしているかを落ち着いて考えてみてください。そもそも自分の意思だと思っているものは外的な影響を案外受けているものです。そういった意味で、「落ち着いて」考えてみてください。

 

話は少し変わりますが、このプロジェクトにより今の生徒は毎週のように競い合うのが暗黙の了解になっているように私には見えています。今の様子を見ていると遠くからでも(良くも悪くも)価値観の大きな変容を実感しています。  

このプロジェクトが始まる前は、試験の直前期は代表選考において勝ち進めることを目標とした勉強になってしまうにせよ、基本的にはじっくり自分のペースで理論を学び問題を考えるのを楽しむという世界だったと(少なくとも私は)思っています。そのため、こういう楽しみ方もできるようになったのか、と思う一方で、今は一年中競い合うことによって「休息期」のようなものが無くなり、むしろ価値観の単一化が進んでおり、自己暗示をかけて強迫観念に囚われている人が(楽しんでいるにせよ楽しんでいないにせよ、意識的にせよ無意識的にせよ)増えているのではないかという不安があります。

これは勝手な憶測かもしれませんが、このプロジェクトの中高生ボランティアへの依存度の高さは、それを利用している部分もあるのではないかと危惧しています。  
競い合う様子を常に見ることができるようになり「実力」とされるものが公式に数値化されてしまっている今、競争の構造が少なからず悪用されている側面はありませんか?「自分からより積極的に関わっていかなければならない」という感覚に囚われているということはありませんか?

 

勿論のこと本当に純粋に楽しんでいる、自分の意思で貢献している、というのなら良いですし、まだそうであることを願いますが……最初はそうであったとしても振り返る機会がなければいつの間にか歪んだ形になっていくものです。最初に「落ち着いて考える」と言ったのはそういう意図です。一度初心に立ち返ってみてはいかがでしょうか。

 

皆さんの今の立ち回り方は一つの競技数学に対する向き合い方でもありますが、他にも様々な向き合い方もあるということは一つ伝えておきたいと思います。その向き合い方が自分に合っているなら良いですが、自分に合っていない向き合い方をしてモチベーションを失ってしまったり、無駄に時間をとかしてしまったり、楽しめてもいないのに目標から離れた方向に走ってしまったりするようでは元も子もありません。

 

最後に

これを読んで皆さんがどう思うかの方が大事です。この記述は完全に間違っている!と思うのなら、なぜ間違っているかが言語化できていればそれはそれで良いです。また、これを鵜吞みにするのも危ないのできちんと自分で考えてください。あくまで一人の人間の所感として読んでいただければと思います。

 

このプロジェクトが始まってからいつの間にか2年が経過しています。運営、ユーザーの全員で一度在るべき姿について落ち着いて考え直す頃合いではないかと勝手に思っています。まあもう今更どうこうできることでもないのかもしれませんが。

 

ぺりをだねぇ